「これまでの転職本とは大きく異なる」
読み始めてすぐに、そして読了後このような感想を持ちました。
何がどのように異なるのか、そして、この一冊で何が得られるのかを、要約と人材業界で働く筆者の考えも一部交えて紹介していきます。
※この本の内容をしっかりと理解したいという背景から、今回は要約記事となっております。
人材業界で働くうえで知っておきたいというだけでなく、正しく理解することで、自分の働き方につなげることができる、周りの転職を考えている人に正しく自信を持って話ができると思ったからです。
↑要するに働くすべての人ってことですね(笑)
でも実際にそう思いますし、本書の題名が「働くみんなの必修講義」となっている理由でもあると思います。
それでは、要約に入っていきます。まずは前提について、お伝えします。
この本は、「大人の学びを科学する」立教大教授の中原先生が、人材会社パーソルとが共著で綴った、転職本です。
冒頭で申し上げた、これまでの転職本との違いとしては以下3点です。
・いわゆるハウツー本ではない
・マッチング思考ではなく、ラーニング思考である
・ゴールが転職ではない
巷のハウツー本では、転職するためには「どのように情報を探すか」「転職するために必要な情報は」などが多いと感じます。
一方この本は、パーソル総研のデータを基にした研究結果であると言えます。
全ての意見に裏付けがあるのは説得力と納得感が違います。
ラーニング思考については、特にこの本の気に入ったスタンスです。
これまでの転職本に多いのは、「いかにして自分にマッチする仕事を探すのか」というマッチング思考です。
自分もこれまではこのような意見を持っていました。
世の中には無数の職種と会社があるのだから、今の自分のまま活躍できる場所は必ずあると。
しかし、転職をより豊かなものにするためには、転職というプロセスを通して、自分で学び直し、変えていくことが必要というのがラーニング思考であり、この本の大前提となります。
「パズルのように当てはめるのではなく、人間は形を変えることができる」という考え方です。
ここで注意したいのが、会社に合うように自分を変えていこうということでは決してないということです。
自分を見直し、転職を通して学び直すことで、よりよい自分の働き方、働く場所を見つけていこうということが大切な前提です。
そして、転職をするということをゴールにしないということが、この本が他とは大きく異なるポイントです。
転職活動をひとつのストーリーと捉え、ゴールは自分が定着、活躍していけるというところに置いていきます。
冷静に考えると当然のことではあるのですが、ハウツー本で、Howの部分を学びすぎると、つい、転職が成功したタイミングで満足していまうという現象が起きます。
この本の中では至る所で、最終的に幸せに転職を成功させるかという事に立ち返っていますし、
すべての意見がそこを前提に語られていることが、ひしひしと伝わってきます。
前置きが長くなりましたが、ここから内容の要約に入っていきましょう。
この本では、必修講義ということで、「オリエンテーション+1~7講+特別講義+最終講」というように構成されています。各講義の内容の概要をお伝えすることで、全体像を把握し、内容をかいつまめるようにしていきます。
※こちらでは1~3講について紹介いたします。
第1講:人はどのような時に転職を考えるのか
どのような時に転職を考えるのかを科学的に説明し、自分の現在地を把握することが第1講の目的です。
転職の方程式
「 D × E > R 」
D:不満「現職への不満が高まる」
49ページ
E:転職力「外の世界で活躍できる可能性が高まる」
R:抵抗感「転職をするということに対する抵抗」
こんな理論的に転職について考えた事はなかったです。
自分のD×Eが転職に対する抵抗とどれぐらいの差があるかを振りかえることで、
自分の現在地を確かめてみてください。
そのうえで、本を読み進めることで、より主体的に読めるように思います。
また逆に普段の生活では、この方程式を意識することで、自分の立ち位置を客観的にみれるのもいいところかもしれません。
転職を決意するのは不満ではなく、「不満の重なり」「不満の変わらなさ」
人はたった一つの不満では、転職をするということには至らないということです。
では、どのような時に決意するのか、それは「重なり」と「変わらなさ」です。
「重なり」では、スイスチーズモデルが例で登場します。
スイスチーズモデルとは安全管理の分野の用語であり、
「事故は単独で発生するのではなく、複数のエラーが連鎖することによって起きる」という考えです。
転職も一つの不満ではなく、様々な不満が重なり、それが、チーズの穴を貫通したときに初めて、決意に至るという考えです。
「変わらなさ」に関しては、不満を感じたときに、その不満の種類や大きさではなく、その不満が解消されないということが決意においての要素になるということです。
頑張っているのに評価されないというのはただの不満のままですが、
これが「いつまでたっても今後評価される仕組みにはならないだろう」ということに気づいてしまったときに転職の決意につながるということです。
「重なり」も「変わらなさ」も自分の働いているときの不満と転職を考えたのかをいうことを振りかえると当てはまっているところは多いのではないでしょうか。
第2講:転職力とは
さきほどの方程式でD(不満)とR(抵抗)は比較的受け身な要素ですが、転職力は自ら向上させることが可能な要素となっています。
それでは、転職力とは何なのか具体的に見ていきましょう。
転職力は2つに分解することができます。
①性質としての転職力
例)持っている各種のスキルや知識、経験や資格
②アクションとしての転職力
例)職務経歴書の書き方や面接での振る舞い、考え方、マインドセット
=転職において発揮される一連の能力
これはどちらも必要な能力です。この本では特に②の力をどのようにつけていくのかを具体的に記されています。一つ注意していただきたいのが、転職する上でのハウツー、つまり受かるためのテクニックではないという事です。転職をするという一連のプロセスの中で必要になってくる力であって、「内定獲得」ではなく、納得のいく転職の成功を目指していきます。
求職時リアリティショックとセルフアウェアネス
聞きなれない二つの単語ですが、ひとまず内容に入ってきます。
納得のいく転職の成功つまり、転職後の満足度には「求職リアリティショック」が大きく関わってきます。
「求職時リアリティショック」
転職活動を始めた人が、それ以前には想定をしていなかった厳しい現実に直面し、抱える悩み
例)思っていた以上に自分が応募できる求人が少ない、自分の市場価値の低さ
この求職時リアリティショックが大きい人は転職後の満足感が低く、小さい人は満足感が高いという研究結果が出ています。
考えてみれば当然ではあるものの、ここを理解したうえで、より求職時の理想と現実の差を埋めるための行動をしていくのが重要です。
そして、その差を埋めるための行動こそがセルフアウェアネスです
「セルフアウェアネス行動」
自分自身の内側を見つめて理解する「内向きの認識」と
他者から自分がどう見えているのかを理解する「外向きの認識」を重ね合わせて、ズレを補正していく行動
要するに、自己認知と他者からの見え方とのギャップを少しでも減らしていくということです。
セルフアウェアネス行動を行っていくことによって、いざ転職をするとなったときに、ショックを受けずに、活動を進めていくことができます。
この本では、具体的にどのようにセルフアウェアネス行動を行っていくのかということや、セルフアウェアネスの観点から見た、職務経歴書の書き方や面接の方法について書かれています。
全て書いていると膨大になってしまうので、ぜひ読んでください!
このブログでは、満足のいく転職をするためには、自分を正しく認知していくことが大事というスタンスの部分を伝えられればと思いこちらの要約をいたしました。
第3講:転職の相談「孤独になるな!」
第3講ではセルフアウェアネスの高め方について書かれています。
結論、誰かと一緒に相談しながら進めていこうということです。
第2講であったように、セルフアウェアネスとは自己認知と他人からの見え方のズレを補正していくことです。
ということは、他者との関りは必要不可欠なのです。
ここで重要なのは、「誰にどのように相談するか」ということなので、この二つについてまとめていきます。
安心屋さんと緊張屋さんに相談しよう
他者からの見え方を知るためには客観的に自分に指摘をしてもらえるような存在(本書では緊張屋さんと表現)に相談をすることが必要です。
多くの人はこの緊張屋さんを仕事の関係者や同僚、転職エージェントとしているようです。
客観的指摘、つまり厳しい内容も含まれるわけですが、転職活動というのはやはり精神的に大きなストレスがかかります。
その中で安心やすっきりという気持ちを得られる相談相手も必要になります。これが安心屋さんです。
転職活動をしていく中で、この両者が身近にいることが非常に有効になっていきます。
また、一般的には、この両者は兼任ではなく、別の方の方がよいともいわれているそうです。
では、次に「どのように相談するか」に入っていきましょう。
ゴーギャンの問いかけ
転職活動では一貫したストーリーが非常に大切です。
自分の意見や思い、考えが一貫していないと、面接で受かりにくいということはもちろんですし、転職できたとしても、また不満が出てきて、幸福な選択ではなかったと思ってしまうことになりかねません。
この一貫したストーリーを確立するための考え方の型が「過去・現在・未来」を考えつなげていくことです。
「人生(仕事人生)を振りかえり、これまで何をしてきたのか、今何を思っているのか、そして未来何をしていきたいのか」=ゴーギャンの問い
これを自己認知、他者からのフィードバックを元に明確にしていくことが、セルフアウェアネスを高めることになり、満足のいく転職活動につながるというわけです。
過去現在未来を一貫して生きるということは、転職活動においてだけでなく、どのような仕事・生き方をしていても必要になってくると思います。
ここが確立されている人は、人を引き寄せるし、安定した成果をだすことができると思います。
それは一貫性が生み出す説得力でもあるし、滲み出す自信が良い結果を生むと考えます。
転職以外においても大事な考え方、そして転職するときに非常に有効に働く生き方であるため、筆者は「常に片手に転職のチケットを」と表現していたのではないかと思いました。
いかがでしょうか。
初めて聞くような単語も多かったと思います。
しかし、新しく転職というものを学ぶということに対しては、
全てのはたらく人にとって大切なものであると思います。
後編では第4講以降の解説を行います。
学ばない日本人についてや転職し新しい会社に入社後について、などについて解説していきます。
ぜひ合わせてご覧ください!
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