映画化された話題作ということで軽めの興味で手に取ったのだが――
気づいたらどんどん読み進めてしまい、気づいたら読み終わっていた。
思っていた以上に、かなりストライクゾーンな小説だった。
あらすじ
賞金1000万円がかかる生放送のクイズ大会「Q1グランプリ」決勝戦。
主人公・三島玲央と本庄絆の対決は、どちらかが正解すれば優勝が決まる最終問題までもつれ込んだ。
問読み(出題者)が「問題!」と発した、まさにその直後――
回答権を示すランプが点灯する。
ボタンを押したのは、本庄絆。
そして回答。そして、正解。
問題文は一文字だって読まれていない。
それなのに、なぜ本庄はボタンを押せたのか?
なぜ正解できたのか?
これは魔法なのか、ヤラセなのか――?
その不可解な謎を、敗れた三島玲央が自らのクイズと人生を通して、ロジカルに解き明かしていく物語。
感想
クイズとは人生 ー失敗すら「正解音」に変えてくれるのが、クイズだ
クイズとは、これまでの人生や知識、体験の引き出しから答えを導き出すゲームだ。
過去に見聞きした出来事を頭の中から検索し、回答する。
つまり、「クイズ=その人の人生そのもの」なのだ。
作中で特に心に刺さったのが、「クイズは人生を肯定してくれる」という一文。
生きていれば、「あの時あんなことをしなければ」「あの選択をしなければ」と思ってしまうような経験が誰にでもある。
だが、クイズの世界ではそんな無駄に見えた経験さえもが、突然最高のヒントに化けることがあるのだ。
そして見事に答えられた瞬間、頭上で「ピンポン!」と正解の音が響く。
その瞬間、自分の歩んできたどんな人生も、どんな遠回りも無駄ではなかったのだと証明され、肯定される。
「人生に無駄な経験なんてない」という言葉自体は使い古された綺麗事かもしれないが、
それを“クイズの正解音”という形で体感させてくれる発想が非常に面白かった。
人生とはクイズ ー選択肢のない世界で「正解」を自作していく生き方
人生の中には無数の選択肢があり、人は正解を探して迷い、苦しみながら生きていく。
なんなら選択肢すら用意されていないことだってザラにある。
そんな答えのない日々の中で正解を探し求め、自分で選び取り、それを後から「これで良かったんだ」と自らの手で正解にしていくこと――
「人生をクイズ」と感じた。
何が正解で何が不正解かも分からない世界だからこそ、正解を探し求め続ける営みそのものが「生きる」ということなのだと気づかされた。
「純粋な競技」か「ビジネス」か。三島玲央のしなやかな強さ
主人公の三島はクイズを純粋な「クイズ(競技)」として捉え、
対する本庄は「ビジネス(今後に繋げるあくまでも手段)」として捉えていた。
もちろん、どちらも間違いではない。
歩んできた人生や今後の生き方が違えば、同じ「クイズ」であっても、ある人にとっては目的になり、ある人にとっては道具になる。
ここで「こんなのクイズじゃない」と突っぱねることもできただろう。
自分が数十年も誇りを持って打ち込んできた世界を汚されたと感じて、憤ることもできたはずだ。
実際にそういったプレイヤーも三島の周りや仲間たちの中では強く憤り、反発する者もいた。
それでも三島は「そういう考え方もあるのか」と一度受け止め、「クイズには出題者と回答者の掛け合いという側面もある」と自分の解釈をアップデートしてみせる。
この思考のしなやかさと受容力こそが、三島という主人公の一番魅力的な部分だと感じる。
一時、QuizKnockのYouTubeにハマっていた。
クイズはただの知識比べではなく、スポーツや競技の側面があるんだなと感じていた。
この小説でもあらためてそれを感じさせられた。
クイズという題材から、ここまで深くて熱い「人生論」に連れていかれるとは思わなかった。
「0文字で回答?どういうこと?」という入口の興味からでいい。
ぜひ一度手に取ってみてほしい一冊。
その先には、クイズに対する印象がガラリと変わり、自分の人生についてもう一度考えたくなる未来が待っている。


コメント